或いはヨメさんとの不毛な戦いの記録
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マーク・ミラー脚本、ブライアン・ヒッチ画による、“アルティメッツ”日本語版。
アルティメッツは、マーベル・ユニバースの数ある並行世界のひとつ、「アルティメット・ユニバース」におけるヒーロー・チーム、つまりアベンジャーズである。
この「アルティメット・ユニバース」とは、マーベル・コミックのヒーロー達が、そのあまりにも長~い歴史故(キャップは第二次世界大戦、アイアンマンはベトナム戦争時に誕生した)に、いわゆるサザエさん状態となり、かつ、後付け設定も複雑になりすぎて、新しいファンにとって敷居が高くなっていることに対する配慮から、既に時代遅れとなっていたヒーロー達のオリジンやコスチューム等も21世紀の現代社会に即した設定に改め、新たに生み出された、仕切り直しの世界である。
しかし、そこはマーク・ミラー。一筋縄ではいかない。単なる設定の焼き直しではなく、現代社会を反映した、かなりシニカルな内容となっている。
かくいう管理人も、実は今回がアルティメッツ・デビュー。
フィギュア関係で何度となくアルティメッツについては言及してはいるものの、恥ずかしながら原作を読むのはコレが全くの初めて。
先日フラリと本屋に出かけて偶然この本を目にした際には、その厚みと価格に恐れをなしたが(ちなみにサイフには4千円しか入ってなかった)、スカイツリーの展望台から飛び降りるつもりで購入し、帰宅して一読するなり、予想を裏切る展開に、まさに衝撃を受けた。
以下ネタバレあり。
ストーリーは、超常パワーを持つ驚異的な存在が次々と現れた現代アメリカにおいて、従来の武器や考え方では対処不能と判断した政府が、新世代の脅威から人類を護ることを目的として、ニック・フューリーに少数精鋭の最強チーム“アルティメッツ"の結成を命じる。
様々な波瀾を越えてチームが集結した時、彼らは人類を襲う未曽有の危機に対峙する…というもの。
設定は映画版“アベンジャーズ”と同じだが、内容は天と地ほど異なる。
キャプテン・アメリカに関しては、ほぼ従来のイメージとおり。
(相棒のバッキーは無事終戦を迎えてウィンター・ソルジャーになることなく、フツウのおじいちゃんになっているが…。)
トニー・スターク(アイアンマン)についも、特に違和感を感じることはなかった。
(ペースメーカーはない代わりに、脳ミソにゴルフボール大の腫瘍があり、余命5年となっている。)
しかし、ハルクはヴィランよりも怪物であり(人を食う)、
ハンク・ピム(ジャイアントマン)はあまりにも最低野郎であり、
その妻、ジャネット(ワスプ)はあまりにも可愛そうだった。
そして、なんといっても不可思議な存在である自称“雷神ソー”。
アメコミファンとして、アルティメット・ソーの存在を知ってはいたのだが、今回、実際に原作を読むまで、いまひとつその設定の意味するところが不明だった。
どうやらこの「アルティメット・ユニバース」には従来の“ソー”というヒーローは存在せず、その代わりに、北欧神話におけるところの神である“ソー”を名乗る謎のヒッピーという設定らしい。
ムジョルニアを持ち、強大なライトニング・パワーを如何なく発揮し、アスガルドにおける活躍もほのめかしてはいるのだが、ヒーローとして目覚める前には精神病院に収容されていたという過去があることから、シールドの一部の人間からは白眼視されている。
今回のヴィランは、チタウリ(スクラル)であり、姿を変えて人間社会に潜り込み、宇宙にとって害悪となる人類の滅亡を試みる。
最後は直接的な破壊を試みるが、それまではチマチマとした陰湿なやり方であり、あまりにも地味すぎる故に、どちらかというとヒーローの私生活や対立や軋轢がメインになってしまい、イマイチ、悪役としての影が薄いのが難点。
他にも、政治的な駆け引きや、目を背けたくなるようなDVなどの社会的病理の姿も克明に描かれており、とても子ども向けとは思えないほど暗くて、リアルで風刺の効いたストーリーとなっている。
この作品からは映画“アベンジャーズ”のような爽快感を味わえないかも知れない。
しかし、もし本当に現代社会にマーベル・ヒーローが存在したら…というIFを考えた場合、全く笑えない現実として、映画にはなかった(妙な)リアリティを感じることができるのではないだろうか。
もちろん、それを是とするか否とするかは純粋に好みの問題ではあるが。
個人的には是でも否でもなく、これはこれで十分に“アリ”だと思う。
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